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発売開始から約半年で1万台出荷!ものづくりベンチャーがヒット商品を生み出した秘訣

東京都板橋区にあるものづくりベンチャー企業の株式会社ロビット、自社開発製品が発売からわずか半年で製品の出荷台数1万台を突破したという。

あっという間に一万台出荷にこぎ着けためざましカーテン「mornin’」とは?

めざましカーテン「mornin’」とは、彼らが一般消費者向けに販売しているスマート家電。カーテンレールにハードウエアの「mornin’」を取り付けることで、カーテンが自動で開閉するというもの。その自動開閉設定は、スマートフォン専用アプリから操作を行う。目覚まし時計をセットするように、スマートフォン専用アプリで目覚ましタイマーをセットする。その時間に合わせてリモートコントロール機能が働き「mornin’」がカーテンを自動で開けてくれるという仕組みだ。それによって、太陽光の光が部屋の中に入り、その光を浴びることで目覚めがよくなるというもの。

画像引用元:ロビット

画像引用元:ロビット

どのようにこの商品が生まれ、なぜ多くの消費者の心を早期に掴むことが出来たのだろうか?

「mornin’」を手がける株式会社ロビット高橋社長、機械・機構設計担当の平野氏へのインタビューを元に「mornin’」の誕生秘話、その成功要因と秘訣について、ひも解いて行きたいと思う。

アイデア発想は、身近にある困難を解決することから

「mornin’」の開発基点は、多くの人が抱える「寝起きの辛さ」を改善したいという思いから始まったものだ。
「朝が起きるのが辛い…」「あともう少し寝ていたい」と思いながらもだるい体を起こして一日のスタートを始める人は多い。その誰しもが思う「このような状態が改善されるなら…?」と。
もしかしたら…技術のチカラで多くの人が抱える寝起きの問題=「困難さ」を何とかできるかも…と。

問題の「障壁」の本質を見い出した製品コンセプト

なんとなく抱えていた問題を製品コンセプトに落とし込むにあたり、“睡眠と起床のメカニズムを徹底的に研究し医学系の論文を読み漁り、睡眠系の研究者にもヒアリングを重ねる。その結果、朝日を浴びることで脳内物質が分泌され、すっきりと目覚められるという科学的根拠となる知見を得た。”という。この作業を通して彼らは、睡眠と起床のメカニズムを理解する過程において、目覚めの「障壁」となっていることの本質的な部分について発見し、それが困難な問題を解決し「快適な朝を迎える」ための製品コンセプトになるということに辿り着く。後にヒット商品に繋がる「mornin’」の製品化へと具体的開発を進める上で、この製品コンセプトなら「イケる」と、思う瞬間だ。

午前7時頃はメラトニンの濃度が高いのですっきり起きられる人はいない。とくに若い人は“寝る力”が強いので眠い状態が続く。しかしメラトニンを太陽の光で抑制すれば、気持ちよくスマートに起きることができる。室内の電灯は一般的に300lx(ルクス)程度の明るさしかないが、一方で、太陽光は曇りの日でも1万lx程度の明るさがある。メラトニンの分泌は2500lx前後の明るさで抑えられるため、「さんさんと太陽光が入ってくる状態なら目覚め良く起きられる」という。(睡眠研究の医学博士遠藤拓郎氏)

 

後にロビットは、製品を紹介するPR動画に、アイデア発想を得た「日常の困難にさようならする」というコンセプトを取入れている。

市場のマーケットと彼らの製品コンセプトが受け入れられるかどうかについて、マーケティング会社を使ったり、何かのデータを使うということは特にしなかったという。ただ、利用者でもある自分たちが抱える困難な問題を解決することに消費者のニーズはあるだろうということを「肌感」で捉えていたという。

利用者の便利を考えたハード+ソフトウエアのスマート家電の開発へ

目覚めの「障壁」となっているのは、体内が目覚める状態ではないから。その根拠を理解した彼らは、太陽のチカラで体を楽に「起きるモード」にする製品づくりに着手する。
彼らの製品づくりの強みの一つは、利用者がどうすれば使いやすいかについて深く考え、その考えに基づいたアイデアを製品に組み込むことができる探究心と互いへの尊重と粘りがチームにあるからではないかと思う。

使用感と耐久性

「mornin’」を手にしてみると、軽い。本体は、1個約67g+単3アルカリ電池3本の重さ。「mornin’」のハード部分(カーテンの開閉を実際に動かす部分)はとてもシンプルに創られている。ハードの部分は必要最小最軽量設計に、そしてソフトウエアの部分であるスマートフォンアプリに動作指令を送る機能を持たせている。

使用感を左右する使いやすさの追求は、本体をカーテンレールに取り付ける仕様そのものにも。ミニロボットのようなハード本体中央部には大きなボタンがある。そのボタンを押すだけで簡単にカーテンレールに取り付けたり、取り外したりができる。
その差し込みはとてもスムーズで現在特許申請中とのこと。彼らのオフィスには、たくさんの種類のカーテンレールが置いてある。何回も何回も数えきれないくらい、取り付け易さ=使い易さを追求して研究を重ねたという。
研究を重ねたのは、差し込み方だけではない。カーテンレールと本体との相性。カーテンの開閉に必要な本体のスペリ具合と耐久性だ。「mornin’」の本体の中には、開閉動作に必要な樹脂素材で設計された部品がある。一つの部品を変更すると他の部品にも動作が影響するため、全体最適をとる設計技術は簡単なものではないだろう。

取り付けが面倒となると「買おうかなあ」と思っていても「うーん、取り付けが面倒そうだなあ」という消費者の購買障壁にもつながりかねない。また、簡単に壊れてしまうものだと、ものづくりとしての信頼を失う。一度ついた消費者の製品or企業に対するイメージの払拭は容易いことではない。しかし、彼らを見ているとそんな失敗を気にしながら製品開発に取組んでいるというよりも、ただただ「身近な困難を問題に問題を解決する」ことに一生懸命に真摯に、どうやったら今ある問題が解決されるかに向かって考え、ものづくり取り組んでいるという風土のように思う。社長の高橋氏は言う「ビジネスを知っている人なら、失敗から学ぶ強さを知っているはず」と。

使い心地に愛着をプラスする

「mornin’」の使用感は、一歩踏み込んで利用者の使い心地にもタッチしたもの。デザインについては、プロダクトデザインを担当するエンジニアが「どうやったら親しみを持って使ってくれるか」を考え何度も試行錯誤を繰り返したもの。形状は丸みを帯びていて下側に行くほど少し細くなっているため、片手でも握りやすくなっている。

カタチとなったmornin’のハード部分ミニロボットのような愛着のあるデザイン画像引用元:ロビット

カタチとなったmornin’のハード部分ミニロボットのような愛着のあるデザイン 画像引用元:ロビット

 

価格は自分たちの存在する意味的価値を市場に創造するもの

「mornin’」の価格は3985円。利益を上げるために価格を上げた方がいいのではないか?という議論は当然社内でもあったという。「会社として利益が出るなら価格を上げるというのも一つの考え方ですが、本当に自分たちがやりたい事って何だろうっていう考えに立ち返ったときに、目先の利益を追求するのではなく、ロビットという会社が今後成長していく中で、市場に受け入れられる会社であることが重要」と、高橋氏は言う。
価格を決める際に一番考えたことは、お客さんが「コレが欲しい」と思ったときに手に取りやすく気兼ねなく手に入れられる価格を設定すること。そのために自社で行うべきことは、電子部品、樹脂部品の改善。調達や設計の工夫をすることだったという。

お客さんが気兼ねなく手に入れられる価格を設定することで、自分買いだけではなくギフト購買も見込めるのではないか。例えば、忘年会や何かの打ち上げなどの景品としても「mornin’」は扱いやすいのではないだろうか。買いやすい価格帯におもしろがられる商品として受け入れられやすいのではないだろうか。
今までにない製品コンセプトだ。
自分自身で購入するだけでなく、ギフトとして活用してもらえれば、より多くの人に「mornin’」を知ってもらえる機会が増えるのではないだろうかとも考えていたという。

PR負けしない製品だから、マスメディアの効果を狙う

当初は代々的に製品をPRすることは考えていなかったという。しかし、出来上がった製品を実際に自分たちで使用してみて「ほんとうにいい商品だなあ」と気付いたという。太陽の光で目覚めることができた。気持ちよく起きられた。たくさんの人たちに使って欲しい、と自信がついた。「これならPR負けしないかも」と。

製品を発売して得た消費者が届けてくれる新たな商品価値

製品を発売してみて自分たちでは気付かなかったような、商品の価値をお客様から気付かされたという。
一つは、カーテンがリモートで自動開閉できるという機能が防犯目的にいいと、女性消費者を中心に好評だということ。
もう一つは医療に関わるもので、鬱病の患者さんにいいのでは?という指摘。太陽の光でセロトニンが脳内から出る。一定時間、毎日浴び続けるのは治療にいいらしい。また鬱病にかぎらず、認知症にもいいとの声も。体内時計が整う。深い睡眠ができるということが症状の改善に関係しているとも。高橋氏は、今後、医療機関の現場の皆さんとも意見交換をしていきたいとしている。

今後の戦略展開

「mornin’」の今後の展開として、BtoCだけでなく、BtoBにも販路を広げていくという。また、日本とカーテンレールの仕様が同じで、生活スタイルが近しいアジア圏への販路拡大も検討中だ。
「身近な不便や困難を解決する」

彼らの知識を創造するチカラ、開発能力と実行力に、学ぶことは多い。改善、検証、知識創造を重ね、更に面白い製品を世の中に送り出してくれそうな彼ら。日本のものづくりを牽引する存在になる可能性を秘めている彼ら。今後の活動にも注目。

 
■関連記事
ものづくりベンチャー ロビット社から学ぶ ベンチャーマインドのリーダーシップ

 

■参考
めざまし「mornin’」製品サイト
寝起きのだるさにサヨナラ――スマホ連動型カーテン自動開閉機「mornin’」登場
日本産・世界初の“目覚まし”ガジェットが話題!
町工場の志を継ぐ、ものづくりベンチャー

 

 

 

 

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